自社での撮影を中断してから、ちょうど一年が経ちました。
朝8時から日付が変わるか変わらないかの撮影をこなしてから、撤収作業を終わらせて家に帰ると、深夜1時半とか2時位になることはざらでした。
夕飯抜きで少しでも早く帰宅するか、少々遅くなっても夕飯を食べて帰るか…
毎回毎回、食欲vs睡眠欲の果てしなきバトルが繰り返されておりました。
撮影を毎月10日間、撮影ない日には女優さんの面接業務…
そういう日常をおよそ15年間以上も続けてまいりました。
ですので、この一年間は完全に生まれ変わってまるで別の人生を歩んでいるような気が致します。
まずかなり悩まされていた慢性的な腰痛は寛解しました。
腰痛には肉体的な要因と、精神的な要因があるそうですが、毎日早寝早起きの生活リズムになったことで両面とも改善されたからでしょうか?
それから今まではたまにしかやらなかった〔出来なかった〕掃除・洗濯・料理などの家事をマメにやるようになりました。
夕飯の時間が深夜1時から、19時になったので量も気にせず沢山食べられるようになりましたが、むしろ体重は少し減ってきています。
間隔的にほぼ10時間以上食べられなかった夕飯をわずか6時間間隔で食べられるのは、実に有り難いことですね。
つい先日、クライアントであるメーカーの社長と久しぶりにお会いして話した時に、こんな話をされました。
大和さんはいま、10億あげるって言ったら欲しいですか?
いや、そりゃ欲しいですよ!
そうですよね、なら今日10億もらえる代わりに明日死んじゃうとしたらどうですか?
それならお金は要りません。
ですよね、つまり明日という時間には10億以上の価値があるということなんですよね。
大和さんは撮影がなくなったおかげで、貴重な時間を手に入れられたってことですよ!
いや、その代わりに撮影なくなった分のお金が…
というのも野暮なので、やめておきました。
そんな話から遠い昔、父から聞いた話をふと思い出しました。
私の父は、ちょっと特殊な文化的な業種というか事業をやっていたのですが、その事業を広めるために必要なお金の寄付を募っていた時期がありました。
ある時、モーターボートレースを運営している船舶振興会の笹川良一理事長に、10億の寄付をお願いしたところ二つ返事で快諾して頂けたそうなんです。
しかも、理事長室とか応接室ではなく、偶然乗り合わせたエレベーターの中で不躾に頼んだというから驚きです。
その時に、父は感激の余り、
会長は凄い方ですね!億単位のお金を即決出来るなんて…
将来は会長みたいな人間になりたいです!と思わず口走ったようなのですが、それに対して、
そうですか?私からしたら逆に先生が羨ましいですよ。
いやいや、私なんてとんでもない…
貴方には私にはない若さがあるじゃないですか。
この先の人生を謳歌する時間がたっぷりある。
私にはその方がよっぽど価値があるんです。
そう言われて父は絶句したそうです。
確かにお金は沢山あるに越したことはない。
でも、なければないなりにどうにかこうにか生きていくことは出来ますよね。
例えばスキルス性のガンに罹って、医師から貴方の余命は3ヶ月です、と言われたらその時貴方はどうしますか?
今はもうこの世にいない父は、豪快な人でした。
いくらお金があっても墓場にまでは持って行けないが口癖で、葬りのいい時には趣味のカメラや登山にお金を使いまくっていました。
もうちょっと節約して少しは息子に残しといてくれたら…と恨み節を言ったこともありましたが、家族で日本全国を旅行し二人で山という山はほとんど登り尽くしたその思い出こそが、かけがえのない時間であり貴重な財産だったのかなと、今となっては思えるようになりました。
コメント